第3戦目 報知杯弥生賞(G2)
クラシックトライアルへの登竜門である若駒ステークスを完勝したディープインパクトが次に目指すのは、当然トライアルレースである。
最初のクラシックレース「皐月賞」のトライアルレースは、弥生賞(G2)・若葉ステークス(OP)・スプリングステークス(G2)の3つが用意されているが、ディープインパクト陣営が選択したのは弥生賞であった。
2005年3月6日の中山競馬場第11レース2000m芝、前走の若駒ステークスでも大変な注目を浴びたディープインパクトであったが、出走3レース目にしていよいよメインレースを走ることとなった。
8枠10番のゲートに向かうディープインパクトの鞍上には、もちろん武豊。
10頭立てで構成されたこのレース、最外枠のディープインパクトはやはり1番人気だ。
そしてこの日の単勝オッズは1.2倍であった。
さすがに1.1倍ではないものの、G2レースでこれだけの人気を誇るのは、さすがと言わざるを得ない。
阪神でデビューして、京都でステップアップしたディープインパクトは、初めて関東でのレースに臨むが、多くの歓声に包まれたその姿は、ややイレ混んでいるように見えた。
各馬ゲートインして、ゲートが開くとともに駆け出した。
この日の有力馬は、1番人気8枠10番ディープインパクトのほか、2番人気7枠7番マイネルレコルト、1枠1番アドマイヤジャパンというところである。
マイネルレコルトは5戦4勝という好成績を収め、朝日杯FS(G1)と新潟2歳ステークス(G3)を勝利している2歳チャンピオンである。
既に中山競馬場のG1を制しているため、ディープインパクトに初の黒星をつけるのではと応援している方も多くいたであろう。
一方、アドマイヤジャパンは3戦2勝しており、京成杯(G3)を勝利しているほか、上がりタイムの良さも目立つことから、好走が期待された。
この日はそれなりに揃ったスタートとなり、ディープインパクトも前走若駒ステークスのときより良いスタートを切ったように思えた。
第1コーナーに入るとき3頭の位置関係は、マイネルレコルトが2番手、アドマイヤジャパンが5番手、ディープインパクトは8番手あたりである。
やはり2頭ともディープインパクトよりも前の競馬を選択した。
第2コーナーから抜けるころにはマイネルレコルトは先頭に並ぼうかという位置におり、中々のハイペースで駆け抜けているかと思われたとき、マイネルレコルトの鞍上後藤騎手は、そっと手綱を引いた。
ハイペースにならないようにペースを抑えたのだ。
もちろんこれは、最後の直線でディープインパクトに抜かれないような脚を残すためであろう。
向こう正面を駆ける中、マイネルレコルトは2番手、アドマイヤジャパンは4番手あたりを行く。
残り600mというところで、いよいよディープインパクトがギアを上げた。
第3コーナーを大外から曲がりながらも一気に加速していく。
第4コーナーを抜けて直線を向いたとき、先頭との差はわずかであった。
最内3番手あたりを駆けていたアドマイヤジャパンを抜き、マイネルレコルトまであとほんのわずか。
坂を上り終え、いよいよ先頭かと思われたとき、内側から急激に伸びる一頭が現れた。
1枠1番アドマイヤジャパンだ。
一気にマイネルレコルト、ディープインパクトを差し返す。
アドマイヤジャパンは抜かれたのではない。
坂を上り切ったときに差し返せるように、脚を溜めていた。
つまり、わざと抜かせたのだ。
鞍上の横山典弘騎手、見事!
これにはさすがのディープインパクトも負けてしまうか。
負けてしまうだろう。
ただの強馬であれば。
そう。
ディープインパクトはただの強馬ではない。
史上最強馬の一頭であるに違いない。
ゴール寸前で最後の一伸び。
クビ差でかわして見事1着ゴールイン。
まさに、手に汗握る展開のレースであった。
この接戦は、ディープインパクトにとって重要な経験となったであろう。
さぁ、いざ皐月賞へ。
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